脳のなかの倫理―脳倫理学序説

脳のなかの倫理―脳倫理学序説

27:13週目の胎児はヒトというより「ウミウシ」である。
28:ミエリンには絶縁作用
29:胎児が人として保護されるのは23週からが適当
32:ユダヤイスラム教徒の一部には受精後40日経過後の胚を人と捉える。
37:胚の60%から70%は自然に流れている。
39:細胞は私(各人)の基準ではなく、細胞の基準で考えるしかない。
47:『共有地の悲劇』を持ち出す奴は、存在しない敵を想定しているのと同様。
48:死が人生に前向きに作用する場合も稀にあるが、たいていは年を取ることへの恐れが(老化に抗う)数十億規模の産業を産んでいる。
49:脳を身体に追いつかせるのが急務である。
51:加齢で脳容積が減少するのはニューロンを取巻く絶縁物質(髄鞘=ミエリン?)の変化とニューロン接続部の変化
52:アセチルコリンを放出する細胞は加齢と共に減少
54:(ある種の)アポリポタンパクE遺伝子保持者は陳述記憶と手続き記憶が弱い。
56:65歳未満のアルツハイマー患者は遺伝による発症:APP(アミロイド前躯体タンパク質)遺伝子、PS1(プレセリニン1)遺伝子、PS2(プレセリニン2)遺伝子が関与
認知症患者を介護していると患者の意識が明瞭・明晰になる瞬間を何度となく目にするという話は実体の無い介護者の錯覚:人間であるための条件が特定水準の知的能力にあるとすれば彼等は人間では無い。
72:着床前診断の猶予は48時間:受精卵が八細胞期に入るのは受精から三日目、五日目までには胚を子宮に戻す。
73:「ハップマップ」、フランシス・コリンズ
78:親兄弟が統合失調症なら自身の発症確率は一般の8倍、健常者家庭では1%の双極性障害は6%
82:「一般に女児100人に対して男児106人という出生比を少しでも上回るなら、性比の意図的操作の証拠と見做される」ーベネズエラ107.5、ユーゴ108.6、エジプト108.7、香港109.7、韓国110、パキスタン110.9、インドのデリー116、中国117、キューバ118、コーカサス地方アゼルバイジャンアルメニアグルジアは120
83:マイクロソート社:第一子は精子の選別をしない、「家庭内のバランスをとる」との理由で第二子から
85:「本当に愚かな人間がいたら、私はそれを病気と呼ぶ」ジェイムズ・ワトソンがロンドン・タイムズ紙で
97:絶対音感:最も活動する領域は左脳側頭平面、適切な発達時期と遺伝的要因の双方が充たされないと身に付かない。
99:ランス・アームストロングは「膝上と膝下の骨の長さ比率が普通と違う」のでペダル漕ぎに有利。
104:人間が技能を習得しているときに、運動野で神経伝達物質のGABA(ガンマアミノ酸)が減少する。神経活動の抑制を減らして、脳を可塑性が高まるのか?
106:ハロペリドールドーパミン調整能力の機能不全が起ることがある。
111:リタリン飲むとSAT(大学進学適性試験)点数が100点以上アップする(と言われている)。
116:CREB(ヘリコン・セラピューテクス社)、MEM1414:MEM1414の発売は2008年?
117:ドネペジル(商品名=アリセプト):健常者の記憶力向上
119:動物実験で有望と思えたが、臨床で失敗したスマートドラッグは多数:ヒトは既に神経伝達物質の量が最適化されているためか?
122:知能関連遺伝子は第6染色体で一つ見つかる。「遺伝学的脳マッピング
123:前頭葉における灰白質の量の違いは知能指数にも有為な差となる。
128:訴え棄却や司法取引で刑事事件の95%は裁判にならないが、有罪確率は極めて高い。
認知神経科学
131:脳と人と心の区別をつける必要がある。「個人の責任」とは集団の中に存在するのであって個人の中に存在するのではない。
135:悪名高き『時間t』:意識を持つ自己には0.1秒の余裕がある。『自由否定』ラマチャドラン
139:反社会性人格障害(APD)は『自由否定』を用いる能力欠如。前頭前野灰白質が少ない。
143:”脳は決定論に従うが、人は自由なのだ”
・ジャコモ・リゾラッティ
159:P300脳波:1998年ローレンス・ファーウェルは脳指紋法による証拠をミズーリ州警察に提供して15年前の婦女暴行殺人犯の起訴につながる。2000年ティモシー・オグレイディ判事はテリー・ハリントンの再審請求審で「脳指紋法」を証拠として採用することを認めた。「ドーバート基準」
169:「心を読む」をうたい文句にしている技術が本当に心を読んでいる訳ではない。脳神経科学が読むのは脳であって心ではない。心は脳に拠って生まれるが、脳とは全く異なる手に負えない存在である。
170:記憶には時間と場所の札が付いている。
・サー・フレデリック・バートレッド
176:「偽記憶の混入」ドナルド・トンプソンに襲われた(と記憶した)レイプ被害者
179:「フラッシュバルブ記憶」
180:記憶の正しさに対する自身の度合いは、実際の記憶の正しさとは何の関係もない。
183:「架空の真実効果」エリザベス・ロフタス:被験者に出来事を想像させるだけで、本当の記憶とする確率が高まる。
184:いったん有罪判決を受けたあとでDNA鑑定により無罪となった40事例中の「9割」が、少なくとも部分的には誤った目撃証言により有罪が宣告されていた。
186:被験者の家族をサクラにして「子供の頃の架空の話」を聞かせれば、4人に一人はその話を「思い出す」
『記憶の7つのエラー』(邦訳『なぜ、「あれ」がおもいだせなくなるのか』)、『偏見の心理』
201:男のほうが自説を頑なに手放さない傾向がある(らしい)
202:信念にしがみつく:1ドルで買った「ロトくじ」を2ドルで買うと言われても躊躇する人は多い(らしい)。20ドルでも承諾しない例もある(らしい)。
・「重複記憶錯誤」
208:解釈装置の作用で、天候が気まぐれなメソポタミアでは複雑な宗教が、天候の予測しやすいエジプトでは直線的で単純明快な信仰が生まれた。『社会的頭脳』
214:「側頭葉癲癇」
221:とる行動は同じだが、なぜ行動をとったかを説明する理屈が異なる。
215:「ゲシュヴィント症候群」:過剰書字(大量の文書を書かずにいられない)、過剰な宗教性(極端に強い宗教心、道徳への関心が高く「度々改宗する場合もある」)、一時的に見せる攻撃性、粘着性(自ら会話を終えられない、他者依存度が高い)、性的関心の変化(強・弱両極端になる)
ゲシュヴィント症候群を伴う側頭葉癲癇患者または疑いのある著名人:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、フョードル・M・ドストエフスキールイス・キャロルフィリップ・K・ディックギュスターヴ・フローベールジョナサン・スウィフトソクラテスピュタゴラスアイザック・ニュートンアレキサンダー大王、ピョートル大帝ユリウス・カエサル
側頭葉癲癇発作が見られる宗教家:パウロムハンマド、モーゼ、ブッダジャンヌ・ダルク、聖チェチーリア、聖マルグリット、聖ミチャエル、聖カタリナ、聖テレサ
234:「貧しい人々の苦境を気遣うことと、その気遣いが客観的に正しいと考えることは別の問題」
238:他者の行為を観察しているときに、その行為の実行を抑制しているのは「脊髄」
239:”模倣と行動理解の役割を持つミラー・ニューロン・システムこそが、進化の過程における言語の前身”リゾラッティ、ロビン・アラット