鬼むかし―昔話の世界 (角川選書)

鬼むかし―昔話の世界 (角川選書)

14:「隣の爺さん型」に出ている「験競」が翁の舞、2列に並んだ鬼が、下座から次々に出て舞ったのも酒盛りは「延年」にあたる。
16:鬼が死者の霊魂とする話は『日本書紀』斉明7年の条の
”朝倉山の上に於いて、鬼有りて、大いなる笠を著(き)て、喪の儀を臨み視る。”
は『扶桑略記』の同年記事から見て、この鬼は豊浦大臣(蘇我入鹿)の死霊。
20:「残賊強暴横悪之神者(ちはやぶるあしきかみども)」、鬼婆から逃げるのに桃の木に登る。
45:山神が始祖霊として女性(鬼婆)で表現されるのは、慈悲恩寵の面とシャーマニズム
47:墓に鬼が籠もる信仰は、『宋高僧伝』「新羅国義湘伝」→高山寺蔵『華厳縁起絵巻』(第一巻)に見られる。
52:天邪鬼の人真似=山彦
55:『日本霊異記』(中巻第三十三話)の「女人悪鬼に点ぜ見れて食噉はるる縁」で頭と指一本が残るのは、聞き手に食べられたと解からせる為。
67:鯖大師:八坂八浜の鯖瀬(もとは鯖施)にあるのは行基であるが、同見ても修行の弘法大師像。魚は聖(行基)に持たす。
70:牛方山姥→鯖大師:鯖←散飯(さば)=峠(手向け)の神への手向け(供養)、塩と散飯が塩鯖に訛伝された。
83:「食わず女房」で山姥が使う桶は葬送の桶棺(早桶)、桶の代りに甕・瓶・袋・籠・臼、
87:五月五日に「菖蒲と蓬」を挿す由来:中国の年中行事書『荊楚歳時記』では習俗としては確認し難い。五月五日(又は四日)を「女の屋根」、「女の家」、「フキゴモリ」、「女の天下」と云い村の女子が宿に集まり、仕事から解放されて遊ぶことが出来る民俗は日本各地に報告がある。『続・仏教と民俗』
”五月五日の一夜を女の家といふぞかし”『女殺油地獄』(下)
「女の家」を菖蒲と蓬で葺く:宮廷儀礼に「菖蒲御殿」や「菖蒲輿」を5月4日に葺くことがある。『讃岐典侍日記』(嘉承三年五月四日)、『後水尾院当時年中行事』(五月五日)
疫病・洪水を起す御霊悪霊が横行する旧暦五、六月の五月乙女(さおとめ)の忌籠りと推定する。
92:山姥と鉄鎖:山伏の入峰修行と木登り、鎖登り。
155:祖霊(鬼・地蔵)からの米の贈物:『矢田地蔵縁起』の満米上人の白米
161:鶏の鳴声(朝になれば)で鬼は引き上げなければならない。
175:「物」は「物怪」のように姿が無いということ。
218:海洋他界と海岸の聖地(辺路)の間を去来する神として「王子」がいる。この王子が海神と遇されると「恵比須」と呼ばれる。
229:桃の呪力:伊弉諾は追って来た黄泉醜女(鬼)に桃の実を投げる。
236:「日本一」の黍団子:安土桃山時代には職業に「天下一」の称号を濫発した。秀吉の側近には「お伽衆」なる者が精神的には少し幼稚な主人の気に入りそうなお伽噺を語った。少し幼稚な人間でなければ昔も今も天下など取れるものではない。
243:「桃太郎妻まぎ型」の原型は「記紀神話」:桃太郎=大国主命、鬼=(先祖・父)素戔嗚尊、娘=(愛と智慧の)須勢理毘売、黍団子=シトギ団子で鬼(祖先)への霊供。
244:海の彼方の常世から飢饉の救済にくる「ミロクの船」→「七福神の宝船」