いくつもの目―動物の光センサー
5:1920年代にヘクトはオオノガイの水管の光収縮反応を研究して、光を感知する第一段階が光化学反応であることに気付く、高等動物の網膜光反応の研究より遙に以前のことである。
8:プラナリアの目はレンズ無しのピンホールカメラ。視細胞が極僅かなので像は捉えられない、入射光方向を知るのがやっと。
成虫になった甲虫は大きな複眼2つと小さな単眼3つを持つ、クモは単眼8つが普通
11:ヨツメウオは角膜を2分する仕切りを水面に合せて、網膜下半分で空中視、上半分で水中視する。
14:盲目のケープ・フィッシュの側線器には感光機能は無い、卵発生研究から側線器は耳と同一起源の器官
甲虫、イカ・タコ、脊椎動物の目は異なる経路で無関係に進化を遂げた。人とイカ・タコは構成素材は違っても共に目は類似構造に到達した。
21:ワシ・タカは錐体の細胞密度から人比10倍の視力と言われた時期ももあったが、最近では「3倍」、中心窩は2つある。
29:フクロウ・ミミズクの夜間視力は1940年代には人比10〜100倍と言われたが今は「2倍」未満、視力よりも「聴覚」に大きく依存しているが、コウモリの様な「反響定位」は使えない。管状眼(釣鐘状)、瞳孔が開いたとき目のF数は1.30
37:鳥類、爬虫類、両生類、魚類の錐体細胞にある油滴(色素)は食物由来のカロチノイド。特定波長光のカット・フィルタで、人の中心窩にあるカロチノド色素ルテインは青色光のカット・フィルタ。
・薄明視、明所視
41:ロドプシンはカエル、ポルフィヒロプシンは淡水魚、それぞれの網膜から抽出された。淡水と海水との間を回遊するマス・サケは両方持つ、オタマジャクシの間はポルフィヒロプシンのみだが成体になるとロドプシンも持つ、ウシガエルの網膜上半分はポルフィヒロプシン、下半分はロドプシン
44:1852年ヤング・ヘルムホルツの三色説が仮定した赤・緑・青の網膜上の視細胞は1960年代に実証される。色素物質の分解と合成という反対現象による色覚を仮定したへーリングの反対色説は、錐体細胞に3種類の感光色素の実在が証明されると一時消滅するかにみえたが、近年になり網膜の電気生理学の発達により、視細胞より奥のほうで神経信号の処理の仕方にこれを説明できる過程があることが解り、反対色説は姿を変えて存続することになった。
52:一対の松果眼と左右の目で原初は「4つ目」に成るようになっているが、松果眼は相互の空間で競合して一つは頭頂の上に出るが、残り一つは頭骨内に残る。この光と縁の無い松果眼は目としての機能を失い、ついに内分泌だけの器官に落ちぶれた。
・頭頂眼入射光の強弱感知、照度計の働きか?:トカゲの頭頂眼を目隠しすると日中の活動時間が長くなる。ホルモン分泌と連動してトカゲの移動運動を制御している様子。
中生代の恐竜には頭頂眼は無い。
60:セロトニンメラトニンの日周リズムは内在性でいわゆる体内時計に支配されている。NATアーゼ=N−アセチル転移酵素
63:第三の目は左右眼網膜の一部分に生き残っている:哺乳類型爬虫類から原始型哺乳類への進化の際、脳神経の大幅な再編成が起こり、松果眼の1部とこれが脳に連絡する神経が網膜にくり込まれてできたのか?
88:複眼を構造面から体系づけたのは1891年エクスナー:モザイク説=各個眼は光学的に独立している。複眼全体としてはこの点像を集めて像形成する。
・昼間に飛翔する昆虫は連立眼型で視細胞は円水晶体の直下にある。
・連立眼型の昆虫の中に個眼の視野が隣接する個眼の視野と重複するものが多く、個眼の光学的独立は疑問視されている。
・重複眼→夜行性のガ・ホタル、ザリガニ、イセエビ
97:セミ・トンボの角膜が反射する光は5%、チョウ・ガは他の通常複眼の100分の1で角膜表面が直径100NM、高さ200NMの角膜乳頭でコーティングされている。日中光反射を軽減している。
102:夜行性昆虫といえども紫外線視の能力は欠いていない。
103:ミツバチは地球気圏で散乱から生じた偏光を利用して復巣する:1949年フリッシュ
104:ヒトの目と同等の分解能を持つ複眼を造る直径1mになる。
106:ハエ・ハチの単眼をマスクすると光強度の変化に対する感度が鈍る。単眼は「鼓舞器官」?
・ノープリウス眼:アルテミアカブトエビ
108:ハエトリグモの前中眼はガリレイ式(凹レンズ)望遠、視野は狭いが30センチ以上離れた物体を見る。
111:タコ・イカオートフォーカス式カメラ眼、オウムガイは例外のピンホール眼
116:紫外線作用でDNAの鎖上にできるピリミジン二量体:二量体の除去に400nm付近の光を利用して元に復元するのと、二量体を含むDNA鎖の小区域を切り取り、新しいDNA鎖を植え込み回復する2つが方法の何れかで生物は紫外線障害に対処してきた。先カンブリア紀に獲得か?
119:光力学作用:可視光も細胞死を起す:生細胞を人工色素溶液に浸けて可視光当てると、色素が可視光を吸収して発生する一重項酸素が核酸・タンパク質に作用して構造の一部を破壊し最終的に細胞死をもたらす。人工色素だけでなくクロロフィルポルフィリンなどの天然色素でも起こる。例外としてカロチノイド色素は危険な一重項酸素を酸素に引き戻す。除草剤の中には光力学作用の原理を応用したものがある。(ベトナム枯葉剤
120:水深600Mを過ぎると暗闇だが更に深海に行くと生物発光で明るくなる。
124:(植物の)フィトクロームに660NMの赤色光を当てると730NMに最大吸収のある物質(Pfr)に変わり、730NMを当てると660NMに最大吸収のある物質(Pr)に変わる。明るい場所ではPfrとPr平衡状態。