眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

P59:カンブリア紀の爆発とは「蠕虫」が先カンブリア時代のうねり(9億年〜6億年前)の時期に用意はされてはいたが出現しなかった形態(内部に形成されていたが隠れていた体制)が5億4300万年〜5億3800年前の短期間に(海綿、有櫛、刺胞動物除く)全ての動物門が「体を覆う硬い殻」を突如として獲得し、軟体性の蠕虫という形状から個々の動物門に特徴的な複雑な表現型へ変化した出来事で、つまりはうねりの時期(9億年〜6億年前)から爆発まで(5億4300万年〜5億3800年前)の長い潜伏期間に何の変化もなかった不思議を云う。
P78:化石を復元するとき既知のモノからの類推に頼りすぎると合理性を逸脱した間違いを犯しやすい。絶滅動物の体色を現生種から類推するほど危険なことは無い。
P83:7000万年前の琥珀にいた「蚊」が吸っていた血から恐竜の復活が期待されたことがあったが、その核酸=DNAは抽出作業をした研究室内で「混入」した現生生物のモノであることが判明している。また、DNAは「何百万年の単位」では破壊されずにいることは無い。
P84:ラバは驢馬の親から31本、馬の親から32本の染色体を貰うので体細胞の染色体数は63本、生殖細胞はランダムに31本か32本になるため、ラバ同士を交配しても配偶子の染色体数が滅多に一致することは無く、染色体のペアが形成されないので、ほぼ子供が出来ない。
P86:豪州には500万年以前に有胎盤類はいないとされていた。1997年に見つかった1億1500万年前の顎骨(アウスクトリボスフェノス・ニクトス)は有胎盤類で食虫類(トガリネズミ)の特徴がある。未知の哺乳類とする研究者もある。
二酸化炭素の量と植物の気孔数は反比例する。
・オウムガイの気房は海水を出し入れして浮力調整をする「バラストタンク」で垂直移動が容易、アンモナイトも餌のプランクトンを垂直に追った。
アンモナイトは連室細管の対水圧能力から類推して少なくとも水深600Mまでは潜っていた。化石が海岸付近で大量に発見されるのは死んだとき殻に残った軟体部が腐敗して発生したガスが住房の海水を追い出して浮力が生じ海岸に流れ着いたため。
・獣脚竜から鳥類へと徐々に進化したことは実証されている?
・バージェス頁岩はかつては赤道直下にあった。
エンゼルフィッシュは他の同種が縄張りを侵犯すると体表面で日光を収束させ「閃光」を水中で放つ。目に射れば網膜血管が破裂し心拍数や呼吸数が高まる。目が眩むなら良い方で、死に到ることもある集光兵器。
・S・J・グールドらがかつて謎の生物としたハルキゲニアやミクロディクティオンも今は有爪動物門(カギムシ)
カミーユピサロの「農家」
グレートバリアリーフの彩色は「色素」による
1802年トム・ウエッジウッドがモノクロ写真を撮影した。カラー写真はジェムズ・クラーク・マックスウェル
・アンリ・ミルヌ=エドワール:カメレオンの体色変化が「色素の分布構造」にあるのに気づく
・シビレエイやデンキウナギの様な「強力な」発電魚はかつて反進化論者にとっての反証材料だったが、微弱な電気パルスを発する種が発見されて「ミッシングリンク」が埋まる。かつては探査用途=ソナーだったのが、攻撃用途=電撃に変化したらしい。
・反復模様=分断色:虎縞、キリンの網目
P133:モネは同じ風景を同じ日に時間を変えて何枚も描いた。1891年「積みわら」を描いた2枚の絵
石英レンズは紫外線光を通す。
・ヘンリー・ベイツ:派手な翅模様の蝶は飛ぶ速度が遅く鳥の餌食になり易そうだが、襲わない鳥が多い。ヨナクニサンの翅模様は紫外線光のもとで「2匹の蛇」に見える。
・水深1Mの紫外線量は15Mの600倍
・水深200M以下で青の光しか届かなくなるので、体色が赤の動物が多い。赤い体色が青い光を吸収して隠蔽される。
・クラゲの捕食者は獲物=クラゲに対して体が偏光フィルタとなるのを避けるような淘汰圧が働く。
・甲虫の「半球形」の体型はどの角度からも影が生じない、「完全球」だと影ができる。
・「液晶断面」はらせん状の分子がたくさん並んだ状態で「多層の薄膜」に似た構造、層の厚さが光の波長の約4分の1で、反射光の位相が同調する。→構造色
・環境中にさらされている「構造色」には機能がある。
・スカベンジャー不在の海底では生物の屍骸が腐敗する途中で大量の「酸素が消費」されてしまう。
ケアンズ沖1KM深海に生息する等脚目甲殻類「オオグソクムシ」の体長はワラジムシの50倍、動く姿は「メカ」
エドワード・ポールトン「動物の体色」
179:太陽光の全色を一方向にだけ強く反射させると極めて明るい白色光になるがこれが「銀色」で魚類の体色も同じ。
遺伝的浮動=偶然
・ヘビー級「貝虫類」は石油鉱床の指標
・暗黒でオレンジ(果実)に「青色光」を照らしても眼には見えない。
・豪州サウス・ウェールズで40本のウォレミマツが現生している。
・1818年「回折格子」が発明、自然界に存在(「構造色」に関与もしていた)していたのが解ったのは1993年
静岡大学の阿部勝巳
・求愛信号としての「生物発光」
P214:鉄砲エビのハサミは「ソナー」
p220:金箔の色は色素色と構造色の中間で(薄膜から)太陽光を一方向に反射する。「青を除く」全波長が混ぜ合わされて「金色」に見える。物理構造なので色素より圧倒的に長持ちすることは古代人には経験的に理解できたろう。
223:オパールの成分は珪酸、構造色による光学効果で虹色に輝くところは「回折格子」で貝虫が虹色になるのと似ている。
p234:ウィワクシア、カナディア、マルレラの体表面を復元し、日の当たる海水の中で「5億1500万年前の色」を再現させた。
p246:ジェイムズ・クラーク・マクスウェル:ニシンが「魚眼レンズ」に気づいた。
p251:1891年ジグムント・エスクナー:複眼の原理は「レンズシリンダー」にあると考えた。
複眼:連立像眼、重複像眼に分かれる。
p254:1975年クラウス・フィクト(深海エビ)、マイケル・ランド(ザリガニ)は各自の研究から個々の個眼が鏡で内張りされている重複像眼を・・・、1988年ルンド大学ダン・エリク・ニルソンは重複象眼の第3のタイプを甲殻類カニ)から発見。複眼には光量調整をする「虹彩」がないので黒い色素で光の1部を除去する。ネコ、ワニは夜間には反射膜を色素で覆う。
p256:コノドント:カメラ眼を持っていた。
p258:実在した眼の最大は体長3〜4mでイルカ似の爬虫類「オフタルモサウルス」の「サッカーボール」サイズ。500mの深海に潜りケーソン病=潜水病に罹っていた。(化石の関節が陥没しているので解る)
p271:ピカイア、澄江のハイコウエルラ・ランケラータなどカンブリア紀の脊索動物門には眼が無かったがその後の脊索動物は眼がある。最初に眼を獲得したのは節足動物門だから、眼は動物が進化する中で「何度も出現」した現象なのである。
三葉虫の目は「方解石」で出来ている。
p277:エビは明るい浅瀬にいる幼生のときは6角形の連立象眼=個眼(集光効率が悪いが十分な光があれば鮮明画像)だが、成長して暗い深海で棲息するようになると連立象眼を捨て、真四角の反射型レンズ付の重複象眼(鮮明な画像が得られないが光の利用効率の良い)に切り替える。
・5億4300万年前の三葉虫以前には「眼」は存在しなかった。
p283:ルンド大学ダン・エリク・ニルソンとスザンヌ・ペルゲルは眼が1段階ステップアップする毎に「光受容器の長さ、幅、タンパク質濃度」が「1%」ずつ変化すると(控えめに)仮定しても2000回の変化の蓄積があれば「感光性細胞の斑点」が「魚眼=カメラ眼」なると計算した。進化速度として一世代あたりの変化率を「0.005%」に設定すると魚類の眼まで364000世代、一世代1年掛らないとすると「機能する象形成眼」は「50万年」で達成される。
p286:1959年フォン・ベケシーは音が起す効果は、皮膚を振動させることで模範できることを実証した。耳と皮膚が感覚情報を処理する過程には共通要素がある。即ち「神経を共有」していることで、1つの感覚が利用している神経は別の感覚に「転用」可能なのことを物語る。
p304:アンモナイトが死ぬと腐敗した体から放出されるガスが殻に充ちて、浮力の付いた殻は海面に上昇波間を漂い浅瀬の墓場に到着する。しかし、深海を目指した亡骸もあった。カモフラージュを無効化した「視覚に頼る」クロコダイル似の爬虫類モササウルスに噛まれて殻に浸水沈降したのである。なお、カサガイに貼り付かれた跡もある。
p307:5万年前の英国グラストンベリーに近いウッキーホールの洞穴群には崖から突き落とされて「ハイエナ」に食べられたマンモスの骨が多数出土している。ハイエナに狩られていた様だ。
p313:三葉虫は傷口にカルス(肥厚組織)を形成(自然治癒能力を備えていた)することが出来た。捕食者が付けた傷跡の「70%」は三葉虫の「右側」に集中しているので、自身・捕食者のいずれかが「一定の方向」を好む傾向があった。
・エディアカラ生物の時代:先カンブリア紀には食事にありつくのは「偶然」に依った。獲物を探して仕留める捕食者はいない。
・「自然宗教は存在しない」1788年、ウイリアム・ブレイク
・植物の葉は光合成に不要の「緑色光」を反射させるので緑色に見える。付随的な色
・「テレビ」は一夜にして報道を変えた。
p335:飛翔能力を得た脊椎動物の鳥類は陸上・水中に棲む動物が課せられた制約である「迷彩=カモフラージュ」から解放されて「派手な色彩」を誇示する自由を獲得できた。
p336:ニッチの空間には限りがある:全種が同一の繁殖戦略を採用することは出来ない。
p346:先カンブリアのトッププレデターは触覚で感知するクラゲ、「原始三葉虫」は「見える」ようになると速やかに硬組織を具えて「三葉虫」になり、旧生物を圧倒すると「共食い」が待っていた。
カンブリア紀の爆発は「適応までの混乱」である。
p358:聴覚と温度差を識別する能力があるのは「脊椎動物門」のみ
p361:新たなニッチの出現:装甲の軍拡競争の果に動きの鈍くなった「戦車」のスリット=軟体部の入り口を探して仕留める「ヒトデ類」が出現
p366:恒星の形成に関する理論から46億年前の太陽は「25%〜30%」は今より暗かった。
・カナディアン・ロッキーの湖は見事な「エメラルドグリーン」だが「氷河」が岩石を磨り潰して湖水のミネラル含有量が変化したもの。
・宇宙・大気・海水という媒体の光透過率の変化が「紫外線量を増減」させて「眼の進化」を促進した淘汰圧の引き金になった可能性はある。有力候補は「日光の総量」、「海水中のミネラル」、「海面を漂う藻類の一掃」、「スノーボールアース」(残念ながら3200万年の開きがある)