シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源

シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源

『個体発生と系統発生』
52:「生物の器官には数が減る傾向があり、しかも数を減らした器官ほど機能が特殊化しているというのも、一つの進化の法則である」1914年、サミュエル・ウィリストン
59:ユタ州では羊の5〜7%が単眼症で産まれる時期があった。妊娠14日前後の母牛がアメリバイケイソウを食べて摂取したシクロパミンが胚には催奇形物質となった。
70:多肢症は一万人5〜17人、トルコ・エフェソス近郊には「アルティパルマク=六本指」という意味の姓を持つ家系がある。
91:アイレス(ショウジョバエ)、アニリディア(ヒト)、スモールアイ(マウス)=パックス6遺伝子:異種の組み込まれた遺伝子は出所ではなく組み込み先の設定に従う。マウスの眼の遺伝子が、ハエの体では、ハエの眼を形成するプログラムを誘導する。
94:ホックス、パックス6、ティンマン、ディスタルレス各タンパク質はそれぞれ別個のホメオドメインファミリーに属する。
『進化理論の構造』
103:シクロパミンは哺乳類のソニックヘッジホッグ信号伝達系の阻害物質、受容体の一部をブロックしてしまう。
119:「胚は縞が好きだ」フランシス・クリック
127:2組の翅:ウルトラバイソラックス=Ubx
136:「側方抑制」:無秩序で混沌状態の人集団に対して各人の隣人と腕一本分の間隔を置くように指示すると、全員が自分を中心に腕一本分の空間を確保すると全員が均一な距離で並ぶ。
細かいレベルの秩序を生むときの細胞も同様で、ある種の構造を形成する細胞が自分の周りに局地的な「抑制領域」をつくる。抑制領域の外側に位置する細胞はそれぞれ目的の構造をつくると、規則的なパターンが産まれる。昆虫の体毛、鳥の羽毛、爬虫類の鱗、節足類の複眼などは皆、「全体的な調和」の上にではなく、細胞間の相互作用によって「局地的」に生み出される。
183:左右相称形だった共通祖先は少なくとも6か7個のホックス遺伝子とパックス6遺伝子、ディスタルレス遺伝子、ティンマン遺伝子の他さらに数百の構築遺伝子を持っていたのは確かな筈。
189:チェンジャンやバージェスの葉脚類や節足動物を見るとカンブリア紀の爆発は地史上は1000万〜1500万年と瞬間だったが、体のデザインを変更するには充分な時間だった。霊長類、げっ歯類、翼手類、食虫類、食肉類など哺乳類の大半グループも6500万年前の1000万〜1500万年間に出現した。
193:カ紀の葉脚類と節足動物の全てが10組のホックス遺伝子を完備:
199:無顎類の魚ハイコウイクチス・エルカイクネンシスの化石には頭部に目が確認できる。嗅窩、10個以上に分離した椎骨、鰓、背鰭、腹鰭もあった模様、この形態はピカイアよりも複雑で、脊椎動物の登場は1500万年ほど早まる。
202:6-8図
214:多機能性の重複
220:アプテラス、ナビン・タンパク質
224:翅形成抑制:
225:ディスタルレス遺伝子=付属肢形成遺伝子
『水辺で起きた大進化』
240:ピトックス1、腹鰭の消失は1万世代以内で起りうる。
ツールキット遺伝子のホモログ=相同遺伝子
274:シマウマの縞は輪郭を消す分断色のパターン:『動物の適応的色彩』ヒュー・B・コット
280:哺乳類の皮膚と毛包の色素細胞は2タイプのメラニンを生成する。毛皮を黒褐色にするユーメラニンと黄色ないし赤色にするフェオメラニン
メラノコーチン1受容体(MC1R):
288:人でMC1R遺伝子に突然変異が起ると赤毛になる。
289:動物の下面(腹側)と背面の色を違えている主役はアグーチ遺伝子:下面の毛包でアグーチ遺伝子を発現させるための遺伝的スイッチが存在している。アグーチタンパク質はMC1Rタンパク質の活性を阻害するので下腹の色が薄くなる。
290:メラノサイト(色素細胞)は脊髄に近い神経冠にある前駆体から生じる。神経冠から黒色素芽細胞という前躯体が流れ出す。移動経路はの出発点は背中頂上でそこから下方に下り、最後に腹部、胸部に達する。メラノサイトの移動を遅くするか減退させる突然変異が起るとその部分が白くなる。犬の白い胸、猫の白い腹はこれで生じる。
292:胚発生から縞形成が早い個体種ほど縞の幅が太くなり、縞全体の本数が少ない。逆に縞形成の開始が遅いほど、胚全体との比率で個々の縞の幅は細くなり、体全体の縞の本数は多くなる。:シマウマと馬の雑種で縞の本数が多くなる:シマウマの親より子(雑種)の縞形成が遅いせい。(ジョナサン・バード)
298:1つの突然変異が集団中に広がるまでに要する時間:T=2/s ln (2N) Tは世代数、Nは集団の個体数、sは淘汰係数、lnは自然対数
縞無しよりも少し利点があれば、縞模様は充分に維持される。
310:時種=同種の形態が時代で異なるだけ
314:1976年に発見されたラエトリの足跡は仲間とゾウの糞を投げ合って(遊んで)いた最中。
322:内臓逆位は1万人に1人
326:ヒトとチンプのDNA配列は(1.2%差で)3600万塩基対が異なる。(塩基の欠損・挿入、大きなDNA断片の獲得・損失を計算に入れないで、話を単純にすると)ヒトとサルが別れて600万年間で双方「1800万」塩基対の変化があった。しかし、人同士でも非血縁間なら「300万」塩基が異なっている。
ヒトとサルの違いを造っているのは「数千個」程度の差かもしれない。
327:マウスゲノムとヒトゲノムを比較すると、ヒト全遺伝子の99%以上に相当する遺伝子がマウスでも見つかる。逆もまた同じ。ヒト遺伝子の96%はヒトの染色体に並んでいる同じ相対的な順序で、マウスの染色体でも見つかる。5500万年の霊長類進化において、ヒトとげっ歯類のゲノムは本質的に同じ遺伝子をほぼ同じ組成で保有している。遺伝子数の違いは人類や霊長類が起源するにあたってあまり意味が無かったことになる。
329:霊長類>類人猿>人類類の進化は遺伝子がコードするタンパク質の変化ではなく遺伝子の調節機構の変化に拠るところが大きかった(と考えている)。
330:ミオシン重鎖(MYH16):
335:ヒトのFOXP2遺伝子座で「一掃淘汰」が起った徴候は他と比較するとずば抜けて大きい:過去20万年にわたるヒト進化のどこかの地点で、FOXP2遺伝子の突然変異が選択されてホモ・サピエンスに広まった可能性が高い。
350:フランソワ・ジャコブが看破したように、自然の所作は、手近な材料のやりくりであって、オリジナルなデザインを考案するエンジニアではない。:翅は無から発明されたわけではなく、鰓脚(昆虫の場合)や前肢を変更することで成立した。進化のトレンドは一番手頃な経路の選択。
262:創造論者への神の贈り物『ダーウィンブラックボックスー生化学から進化論への反論』にある「生きている細胞は分解できないほど複雑な実体である」というマイケル・ベーエの主張は「空疎」である。