281.55
*牛
牛は反芻する=草・藁など硬い繊維質すなわち高セルロース質植物を消化できる。
悪魔から牛になるまで86回転生する必要がある。人になるには87回。
乳牛の乳は肉に対して5、6倍の飼料をカロリーに変換する。
印度ではイスラム教徒が屠殺した牛肉は「マトン」として食べられる。
リグ・ヴェーダ(ऋग्वेद)のブラフミンは古代イスラエルのレビと同様、動物供儀の祭司=屠殺業で、紀元前1000年頃の印度では牛が最上の生贄であり、神に捧げるに託けて結婚・葬儀・客の訪問でも盛んに肉食した。
森林が縮小し、牧草地に犂=スキが入り牧畜から酪農・農耕に替わると食肉可能な動物が不足する様になる。
しかし、首長・貴族やらは肉食を止めたりはしなかった。彼らに昔の肉食生活を続けられると農民の負担が大きくなった。高カーストが食肉牛を得る方法は狩猟による略奪・神殿献納(租税)なので宗教で制限することが可能なら理想的である。紀元前600年頃、農民の生活水準が下がり、高カーストとの食糧格差が拡がって農民の不満は鬱積された思われる。そこで動物供儀禁止を主張した新思想ジャイナ教・仏教が登場する。
マウリア朝アショカ王は紀元前257年仏教に帰依して動物供儀の撲滅に努めた。アショカ王の祖父はこの思想を利用して印度最初の統一王朝を成立させたのである。
サンスクリット学者ラジャンドゥラ・ミトラは1872年に
 あらゆる供儀を弾劾し成功した仏教と対峙したときブラフマンは動物非殺生の教義を打破できないと観念して、徐々にまた密かに、その考えがあたかも自分達の「教え」であったかの如く振舞う様になり、「牛」を食べるのを断念して乳製品を尊び、終には「牛」の保護者となったのである。
と看破している。
マハトマ・ガンジーは雌牛はミルクを与え零細農民が飼うには最良の犂耕動物の母と思ったかもしれない。
ヒンドゥーは社会的格差を招く牛食慣習を阻止する教えであり、実は仏教と習合した結果の産物です。
要は神=祭司階級に牛を献納するのが嫌になったのです。