◎『ユダの福音書』4月末に公刊

 【CJC=東京】現代最高の発見とも言われる『ユダの福音書』調査報告を4
月末に公刊する、と米ナショナル・ジオグラフィックソサエティが3月2日明
らかにした。ただ雑誌に掲載するか、単行本や電子媒体にするかなどの詳細は不
明。
 調査や訳出に協力したのは現所有者スイス・バーゼルの古代美術マリオ・ロベ
ルティズ・メケナスフウンデーション、カリフォルニア州ラジョーラの歴史的発
見ウェイト研究所、ロドルフェ・カッセル氏(前ジュネーブ大学教授)
 イエスの最後の日々をイスカリオテのユダから描いたぼろぼろのコプト語パピ
ルス文献26ページを学者たちが訳出したもの。2000年にわたって裏切り者
とされていたユダが書き記したものとなると、その中身に関心が寄せられるのも
当然。
 文献はユダを悪者としてではなく、英雄としてそしてキリストのお気に入りの
弟子として描かれている。文献は2人の間の会話を繰り返しており、キリストを
密告したことでユダは神から与えられた使命を果たしたのだ、という。
 英紙メール・オン・サンデーが関係した学者とインタビューし、『ユダの福音
書』では、キリストは自分を密告するようユダに指示し、「あなたは他全部から
呪われる使徒となる。ユダよ、あなたは私を覆っている肉体を犠牲にするのだ」
と語った、と結論づけた。
 他には、イエスがユダに「あなたは13番目となり、各世代に呪われるが、や
がてはあなたが彼らを支配するようになる」という個所が注目される。
 パピルス文献は4世紀のものと推定されるが、中身は紀元187年に書かれた
ギリシャ語文献からの翻訳と信じられている。福音書の多くはキリストの十字架
上での死後50年から80年の間に書かれたとされている。
 キリスト教各派の中には、キリスト教信仰の根幹を覆しかねない、と危険視す
る動きも出ており、『ダヴィンチ・コード』映画化をにらんだ儲け仕事と見る向
きもある。
 文献は1970年代にエジプトのある墓から発見されたが、さまざまな古物商
の手にわたり、16年間はニューヨーク州ロングアイランドの銀行倉庫に埋もれ
ていた。テストの結果、古代の文献であることは疑いない、という。
 ただ米国の著名なコプト語文献学者で1945年にエジプトで発見されたナグ
ハマディ文書にも詳しいジェームズ・M・ロビンソン氏は、真正な『ユダの福音
書』ではないと見ている。古いものではあるが、ユダにまでさかのぼれるもので
はない、と言う。同氏は4月1日にハーパー・サンフランシス社から「ユダの秘
密」という著書を出版するが、これには同文献をめぐる表裏についても触れてい
る、という。□

 《デスクから》ジェームズ・M・ロビンソン氏は、日本聖書協会が5月3〜5
日に東京で開催する『国際聖書フォーラム2006』内のセミナー海外講師の1
人です。