汚穢と禁忌

汚穢と禁忌

Purity and Danger - Mary Douglas -
保健衛生原理に基づく現代人の”汚れ”の観念は、宗教・呪術における”穢れ”に極めて近いものであり、同じく”清潔”は宗教的意味での”聖潔、神聖”に重なるものである。これらは未開人のみの事象ではなく経験から秩序を創出する人類一般にかかわることなのだ。旧約聖書研究者を悩ませた「レビ記」を以上の視点で整理すれば、”浄い”とされたのはヘブライ人の宇宙観に基ずく分類上それに該当したのであり、”不浄”とされたのはその範疇から逸脱したのだ。
”汚物”をさける我々の反応は曖昧・異例なものに対する未開人の反応とその根底において同じで、汚物忌避行動は消極的態度ではなく、自己を理想へと構成しようとする創造的な姿なのだ。