272.76
http://milk.asm.ne.jp/rekishi/wakeru.htm
『涅槃経』には、

「牛より乳を出し、乳より 酪を出し、酪より 生酥を出し、生酥より 熟酥を出し、熟酥より 醍醐 を出す、醍醐最上にして…仏の如く。」
『酪』はヨーグルト(乳酸発酵乳)とか練乳、またはバター、『酥』はクリームとかバターとか練乳、またはチーズ、『醍醐』はバターオイルとかチーズ、というように解釈が一定しません。
『醍醐』は『倭名類聚抄』によれば
「是酥之精液也」
と解釈されています。『酥』をさらに精製加工してつくりあげるということです。
『酥』がバターであるなら『醍醐』はバターオイルとなります。

醍醐はわが国では文献にあっても、実際に味わったことのない幻の食品であったようです。日本では『酥』まて゜(それも日本式の酥)しかつくられなかった、または、つくることができなかったと思われます。
わが国で、『酥』についての製法が出てくるのは『延喜式』です。

乳大一斗煎得蘇大一升(蘇は酥と同じ)

つまり『酥』をつくるには牛乳を煮つめて10分の1にする、と解されます。これは明らかに、加熱によってえられる濃縮乳(練乳のようなもの)をさしています。
牛乳には固形分が12%もあるから、そこまで濃縮することは不可能であり、『酥』は練乳でない、とする説があります。また『酥』は練乳でなくバター(固体)である、という理由に養老6年(722)の『太政官符』の
「これからは酥は櫃に入れることをやめ、籠に入れて貢進せよ」
をあげている人もいます。
しかし。『酥』は正倉院文書『正税帳』(税の決算書)や、『延喜式』にも記されているように壷に入れられています。壷の外装を櫃から籠に改めたとすれば、固体(バター)でなくても液体でよいわけで、さらに練乳よりいっそう濃くした固乳であれば、籠にそのまま入れてもさしつかえがない。

さて奥村彪生(あやお)氏はこの『酥』を実際につくってみて、「ミルクキャラメルのようにほのかに甘いものができたが、煮つめ具合は6分の1から7分の1がもっともよく、煮つめに煮つめても8分の1であった」(『復元・万葉びとのたべもの』)と書いています。

古代のチーズ「飛鳥の蘇」
http://www.kitora.com/so.htm
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000140602010001