有罪か無罪か13
代理によるミュンヒハウゼン症候群

アナスタシア

 しかし親子鑑定よりも重要なのはミトコンドリアDNAによる母系解析である。ミトコンドリアDNAとは細胞核内でなく細胞質のミトコンドリア内に存在する16,569塩基対の長さの環状二重鎖DNAで、ヒストン蛋白質で保護されていないので突然変異による塩基配列の個人差が大きい。さらに1個の細胞内に数千個存在するため古くいたんだ微量の資料からも検出しやすい。そのため犯罪捜査で個人識別を行うためのDNA鑑定の対象のひとつとされている。ミトコンドリアDNAは細胞質遺伝をする特徴があり、卵子ミトコンドリアを介して母親から子へ遺伝するが、父親からは遺伝されない。従って父子の鑑定には使えないが、母方へ遡る血縁の有無を調べることができる。

 Y染色体は父親から男児にそのまま遺伝される。Y染色体上には多数の遺伝マーカー (DNA多型) が見つかっているが、真の父子 (男児) であれば、そのすべての遺伝マーカーの型が一致する。孫も男、ひ孫も男と男系の家系であれば、何代隔てていても、理論上はY染色体の型は同一である (実際には、500世代に1回の割合で突然変異が起こり得る)。

 先祖 (または子孫) の解析ができるという点はミトコンドリアDNAと似ているが、大きな相違点がある。ミトコンドリアDNAは母から子へ遺伝するが、男児でも母と同じミトコンドリアDNAをもつ。また、1細胞中に数千コピーあり、状態の悪い陳旧試料からでも解析が可能である。一方Y染色体は、女児には遺伝されない上に、1細胞中に1コピーしかないので、比較的新鮮な試料でないと解析は困難である。

http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/faq.html#q03
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