ホモサピエンス今後の進化
環境、即ち外的要因でなく、内的要因が進化を促した。1997年スタークフォンテインでロン・クラークが発見した330万年前のアウストラロピテクスの完全体"リトル・フット"が従来の定説を覆す「森林生活向けの足」(足指で樹木を掴める)だったことから、二足歩行はサバンナへの適応ではなく、人類の祖先は森にいた頃から直立していたことが判明し、サバンナ起源説は見直しを迫られている。

ダンブリクールは化石人類の頭蓋骨を比較することで、頭蓋骨中央にある幅約10cmの蝶形骨が定方向に変化していることに気付いた。胎芽から胎児の過程で変化するように、蝶形骨は平らなのが屈曲し、6000万年の間に5回の変化があった。
6000万年前は原始猿の蝶形骨は現在の原猿の様に長く平らだった。
4000万年前に最初の屈曲があり、類人猿が誕生した。目の位置が横から正面へ変化して立体視が可能になる。
2000万年前の変化で10種程の大型類人猿が誕生した。現存するのがチンパンジー、ゴリラ、ボノボ、オランウータンの4種で、文化を持つ。
600万年前の3度目の変化でアウストラロピテクスとなり不安定ながら直立したが、彼らは森が住処だった。
200万年前、4度目の進化でホモ属が生まれた。母音は無いが歯と舌、唇、口蓋を使う音声で意志疎通が可能な口蓋の形質を獲得したらしい。コイ・サン族の言語にこの特徴がある。
16万年前、5度目の変化でホモ・サピエンスが誕生した。抽象的概念を持ち、「絵=シンボル」、「文字」を表現手段として使用する。

また、子どもの歯科矯正専門医マリー・デイエも蝶形骨に注目した。それが「顎」、「歯列」の変形で、欧70%、米80%、日本95%の割合で欧米よりアジアの方が顕著である。デイエは矯正の効果に差が出るのはアジアと欧米で頭蓋骨の構造や発達過程が違うためと主張、なんとヒトの進化は2系統になるらしい。
人類はグレート・リフト・バレー(Great Rift Valley、大地溝帯)で誕生した系統だけでなく、その前に世界に分散していた祖先からも進化したとする説を唱える学者は他にもいて、ホメオボックス、通称HOX遺伝子への刺激が変化を促すことが動物実験(*1)で確かめられていることから、進化はHOX突然変異によるものと考えられる。
サルからヒトへ進化した人類は完成形ではない。次の進化への途中にあり、今も進化は続いている。未来の人類は更に脳が巨大化して顎が縮小し、遺伝子操作だけでなく、機械を身体の一部とするサイボーグ化も進行すると予定されている。

(*1)サンショウウオの幼生アホロートルはHOX突然変異を人為的に操作すると短期間で「エラ」を失い、肺を発生して水棲から陸生になる。
良く噛まないからアゴが小さくなるとか無責任な発言は慎みたい。
600万年前の「トゥマイ」はアウストラロピテクスの奇形。
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