◆「DDTの歌」◆

 ところで、ヒトジラミは法定伝染病に指定されていた発疹チフス(病原体はリケッチア)を媒介するので、終戦後まもなく進駐した米軍はDDTを緊急輸入して、その10%粉剤を駅の改札口などで人体に強制散布した。おかげで、当初200万人以上と予想された罹病者は3万人台でおさまった。
 それで、小学校では「DDTの歌」が振付けつきで教えられた(1947)。その楽譜も残っている。歌詞は珍しいのでここに書いておくことにする。

 チン チン チフス 発疹チフス
 みんな嫌いだ 大嫌い
 お閻魔(えんま)さまより なお嫌い
 そこで撒(ま)きましょ DDT DDT

 ノンノン ノミも シンシン シラミ
 みんないないよ もういない
 おもてで元気に あそべます
 お礼をいいましょ DDT DDT

 この劇的なシラミ撲滅作戦の成功は『DDT革命』(サムス著・竹前編訳、1986)と呼ばれ、日本再建の裏面史から逸することができない事績である。